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大阪地方裁判所 平成9年(レ)78号 判決

控訴人

国正章生

被控訴人

新協運送株式会社

右代表者代表取締役

洲崎利子

右訴訟代理人弁護士

北岡満

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、控訴人に対し、一六万七三三八円及びこれに対する平成五年五月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、二審を通じ、被控訴人の負担とする。

4  第2、3項につき仮執行宣言

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  未払賃金

(一) 控訴人は、平成五年三月二九日、賃金を月額四〇万円、毎月二〇日締切の同月二五日支払の約定で、普通貨物自動車の運転手として、被控訴人に雇用された(以下「本件労働契約」という。)。

(二) 控訴人は、右契約に基づき、平成五年三月二九日ないし同年四月二〇日は出勤すべき日数二六日のうち二〇日、同年四月二一日ないし同年五月二〇日は出勤すべき日数二二日のうち一四日、それぞれ出勤して稼働した。

(三) したがって、控訴人は、被控訴人に対し、以下のとおり、平成五年四月分として三〇万七六九二円、平成五年五月分として二五万四五四五円の賃金債権を有する。

平成五年四月分

(一か月当たりの賃金)÷(出勤すべき日数)×(出勤日数)

=四〇万円÷二六日×二〇日

=三〇万七六九二円

平成五年五月分

(一か月当たりの賃金)÷(出勤すべき日数)×(出勤日数)

=四〇万円÷二二日×一四日

=二五万四五四五円

(四) 然るに、被控訴人は、控訴人に対し、賃金として、平成五年四月分二四万〇六七三円を、同年五月分一七万九〇二六円をそれぞれ支払ったのみである。

(五) したがって、未払賃金額は、以下のとおり、平成五年四月分は六万七〇一九円、平成五年五月分は七万五五一九円、合計一四万二五三八円となる。

平成五年四月分

三〇万七六九二円-二四万〇六七三円

=六万七〇一九円

平成五年五月分

二五万四五四五円-一七万九〇二六円

=七万五五一九円

合計 一四万二五三八円

(六) 仮に、控訴人の賃金が出来高制であって、控訴人のもたらした運賃収入額に対する歩合(四トン%契約)により賃金月額が決せられるとしても、被控訴人が控訴人に対して支払った賃金は、正確に計算された運賃収入額に対する歩合よりも少額であって、未払賃金額は、合計一四万二五三八円を下らない。

2  未払賃金―事故費名目の控除

被控訴人は、事故費名目で、控訴人の賃金から、合計二万円を控除した。

3  未払賃金―新和会費名目の控除

被控訴人は、新和会費名目で、控訴人の平成五年四月分、五月分の各賃金から、それぞれ一〇〇〇円、合計二〇〇〇円を控除した。

4  立替金

(一) 控訴人は、平成五年五月一一日、被控訴人の業務に従事中、中国自動車道佐用・宝塚間を通行し、その通行料金二八〇〇円を支出した。

(二) 控訴人は、被控訴人に対し、平成七年五月一一日ころ、右立替金の償還請求をした。

5  よって、控訴人は、被控訴人に対し、未払賃金一六万四五三八円、立替金の償還請求権二八〇〇円の合計一六万七三三八円及びこれらに対する弁済期の後の日(ただし、平成五年五月分の賃金については弁済期の翌日)である平成五年五月二六日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1(一)  請求原因1(一)のうち、賃金を月額四〇万円と定めたことは否認し、その余は認める。

控訴人と被控訴人は、本件労働契約の締結に当たり、賃金は出来高払とする旨の合意をしたものである。

(二)  同1(二)は認める。

(三)  同1(三)は争う。

控訴人の売上高は、被控訴人の取引先である豊国工業、コクヨ株式会社等が、地区別に定めた運賃表に基づいて、控訴人が運送した割合に応じて算出した。これによると、控訴人の賃金額は、平成五年四月分は二四万〇六七三円、平成五年五月分は一七万九〇二六円であった。

(四)  同1(四)は認め、(五)(六)は争う。

2  同2は、被控訴人が、控訴人の賃金から一万円を控除したとの限度で認め、その余は否認する。

3  同3は認める。

4  同4は否認する。

三  抗弁

1  事故費名目の控除に対する同意(請求原因2に対し)

(一) 被控訴人と控訴人は、本件労働契約の締結に当たり、控訴人が業務遂行中に第三者に損害を与え、被控訴人が使用者責任を追及されて右損害を賠償したときは、業務外、センターオーバー、飲酒運転を理由とする事故による損害ないしは積荷等の損害は賠償額全額、これ以外の損害は、三万円を限度として、本人負担とする旨の約定を締結した。

(二) 控訴人は、平成五年四月五日、兵庫県小野市において、被控訴人の業務を遂行中、過失により事故を発生させ、第三者に対して損害を発生させた(以下「本件事故」という。)。

(三) 被控訴人は、右損害の賠償として保険会社から保険金一八万九四三〇円の支払を受け、右損害のうち九万九五八八円を右第三者に支払った。

(四) 被控訴人は、右約定に基づき、本件事故につき、控訴人の平成五年四月分、同年五月分の各賃金からそれぞれ五〇〇〇円を控除した。

(五) 被控訴人は、控訴人に対し、右が事故費名目の控除であることを説明し、控訴人はこれに同意した。

2  親和会費名目の控除に対する同意(請求原因3に対し)

(一) 親和会とは、被控訴人の従業員で構成され、従業員相互の親睦を図ることを目的とする任意団体であり、会員たる従業員の賃金から毎月一〇〇〇円の会費を控除して徴収し、これを親睦会の費用、各種贈与金に充てている。

(二) 被控訴人は、控訴人と本件労働契約を締結する際、親和会の趣旨を説明し、その加入及び賃金からの会費の控除について同意を得た。

3  本人の意思(請求原因4に対し)

被控訴人は、従業員が運転業務に従事する際、高速道路を通行しないように定めていた。

四  抗弁に対する認否

1(一)  同1(一)は否認する。

(二)  同1(二)は認める。

(三)  同1(三)は不知。

(四)  同1(四)は認める。

(五)  同1(五)は否認する。

2  同2、3は否認する。

五  再抗弁

承諾(抗弁2に対し)

控訴人は、請求原因4記載の運転業務に従事する際、被控訴人から、高速道路を通行することの許可を受けた。

六  再抗弁に対する認否

再抗弁は否認する。

第三証拠

証拠関係は、原審記録中の書証目録及び証人等目録並びに当審記録中の書証目録各記載のとおりであるから、これらを引用する。

理由

一  請求原因1(未払賃金)について

1  請求原因1(一)(労働契約)のうち、賃金を月額四〇万円と定めたとの点以外の点は当事者間に争いがない。

2(一)  (証拠略)及び原審における(人証略)の証言並びに弁論の全趣旨によれば、控訴人と被控訴人は、本件労働契約の締結に当たり、賃金は固定部分と流動部分とに区分し、右流動部分は控訴人の売り上げランクに比例して額を決する旨の合意をしたこと、右固定部分と流動部分を併せて賃金月額が四〇万円になるには一か月当たり一〇〇万円の売り上げを達成することが必要であったことが認められ、右認定に反する原審における控訴人本人尋問の結果は、前掲各証拠に照らし、採用することができない。

(二)  しかるに、控訴人が、平成五年三月二九日(本件労働契約締結の日)から同年五月二〇日(同年五月分の賃金締切日)まで一か月当たり一〇〇万円以上の売上げを達成したとの証拠はない。

3  以上によれば、請求原因1は理由がない。

二  請求原因2(未払賃金―事故費名目の控除)について

1(一)  (証拠・人証略)によれば、控訴人は、被控訴人により、平成五年四月分、同年五月分の各賃金から、平成五年四月五日発生の事故の事故費名目で、それぞれ五〇〇〇円、合計一万円を控除されたと認められる。

(二)  この点、控訴人は、被控訴人により、右一万円の他に、更に、発生伝票(〈証拠略〉)により、一万円を控除され、結局控除金額は合計二万円になると供述する。確かに、事故費名目で合計一万円を控除したとの給与明細書(〈証拠略〉)の他に、平成五年四月五日発生の事故について、事故貸付金名目での一万円の発生伝票(〈証拠略〉)が存在するものの、(証拠略)は、平成五年四月五日の事故について一万円の事故貸付金が発生した旨の伝票にすぎず、これによっても、右一万円が控訴人の賃金から控除されたのか否か、仮に控除されたとして控訴人の平成年(ママ)四月分、同年五月分のいずれの賃金から控除されたのかが明らかではない。また、被控訴人が、現実に控訴人の給与支払明細書(〈証拠略〉)に記載して賃金の一部を控除したにもかかわらず、あえてこれ以外に給与支払明細書に記載せずに発生伝票のみで賃金の一部を更に控除するのは、それ自体不自然であるというべきである。

(三)  以上によれば、控訴人の右供述は、採用することが出来ない。

2  したがって、請求原因3は、控訴人が、被控訴人により、平成五年四月分、同年五月分の各賃金から、それぞれ五〇〇〇円、合計一万円を控除されたとの限度で、理由がある。

三  請求原因3(未払賃金―新和会費名目の控除)について

1  請求原因3は当事者間に争いがない。

2(一)  なお、控訴人は、請求原因3記載の新和会費名目の控除について、積立金(労働基準法二三条一項参照)として返還請求するかのようにも解されるので、以下、この点についても検討する。

(二)  労働基準法二三条一項には、使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求のあった場合には、七日以内に賃金を支払い、積立金その他名称のいかんを問わず、労働者の権利に属する金品を返還すべきことが規定されているが、その趣旨は、労働者が退職した場合において、賃金、積立金その他労働者の権利に属する金品を迅速に返還させないと、労働者の足止め策に利用されることもあり、また、退職労働者又は死亡退職者の遺族の生活を困窮させることとなり、更に時がたつに従って賃金の支払や金品の返還に不便と危険を伴うこととなるので、これらの関係を早く清算させるという点にあると解される。

右規定の趣旨からすれば、同条にいう積立金その他労働者の権利に属する金品とは、積立金、保証金、貯蓄金のほか、労働者の所有権に属する金銭及び物品であって、労働関係に関連して使用者に預入れ又は保管を依頼したものと解すべきである。

したがって、以下では、新和会費が、労働関係に関連して使用者に預入れ又は保管を依頼したものであるか否かを検討する。

(三)  (証拠略)(給与支給明細書)、(証拠略)(新和会会則)及び原審における(人証略)の証言並びに弁論の全趣旨を総合すると、新和会とは、被控訴人寝屋川営業所第三課の従業員を会員とし(新和会会則三条)、会員相互の新睦を図ることを目的とし(同四条)、会員の会費、被控訴人の補助金、寄付金を原資として(同一一条)、その資産は会長が統括し、その運用方法を幹事会で決した上で(同一二条一項)、新睦会及び傷病見舞金等の贈与金の贈与を行う(同五条、九条)団体であることが認められる。

(四)  右認定の事実によれば、新和会は、従業員の新睦を図る目的で、被控訴人の従業員により設立された任意団体であって、新和会費は、その維持のために徴収されていたものであるから、労働関係に関連して使用者に預入れ又は保管を依頼したものとはいえず、結局、新和会費は、労働基準法二三条一項にいう積立金には該当しないというべきである。

四  抗弁1、2(各控除に対する同意)について

1  抗弁1、2は、被控訴人が、控訴人の賃金のうち、一部を支払わなかったこと(控除)について、控訴人の同意を得た旨の主張であるが、右主張は、労働基準法二四条一項所定のいわゆる賃金全額払の原則に抵触するおそれがあるので、以下、この点について検討する。

賃金全額払の原則の趣旨は、労働者の賃金が労働者の生活を支える重要な財源であることに鑑み、労働者に賃金の全額を確実に受領させ、もって労働者の経済生活を脅かすことのないようにしてその保護を図るものと解すべきである。したがって、労働者が自由な意思により右控除について同意をした場合においては、右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした控除は、賃金全額払の原則に違反するものではないと解すべきである。

したがって、以下では、控訴人が事故費の控除(抗弁1)、新和会費の控除(抗弁2)について、それぞれ自由な意思で同意したのか否か、仮に右同意があったとした場合に、右同意が控訴人の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かを検討する。

2  右各控除についての同意の有無について

(一)  前記二1認定のとおり、控訴人は、平成五年四月分、同年五月分の各賃金から、平成五年四月五日発生の本件事故の事故費名目で、それぞれ五〇〇〇円、合計一万円を控除されたと認められ、三記載のとおり、控訴人は、平成五年四月分、同年五月分の各賃金から、新和会費名目で、それぞれ一〇〇〇円、合計二〇〇〇円を控除されたと認められる。

(二)  (証拠略)、原審における(人証略)の証言、原審における控訴人本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、平成五年四月二五日(同月分の賃金支払日)及び同年五月二五日(同月分の賃金支払日及び解雇予告手当受領日)、右各控除について明確に記載された給与支給明細書を受領しながら、何らの異議も述べなかったこと、その後、控訴人は、被控訴人に対して異議を述べるに障害となるべき特段の事情が認められないのに、本件訴え提起の直前である平成七年五月一一日ころまでの約二年間、何らの異議も述べなかったことが認められるのであるから、控訴人は、右各控除について、自由な意思で同意したものと認められる。

3  事故費名目での控除に対する同意が控訴人の自由な意思に基づいてなされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かについて

(一)  (証拠略)、原審における(人証略)の証言及び原審における控訴人本人尋問の結果によれば、控訴人と被控訴人は、本件労働契約の締結に際し、控訴人が業務遂行中に第三者に損害を与え、被控訴人が使用者責任を追及されて右損害を賠償したときは、業務外、センターオーバー、飲酒運転を理由とする事故による損害ないしは積荷等の損害は賠償額全額、これ以外の損害は三万円を限度として、本人の負担とする旨の約定(本件債務負担の合意)を締結した(なお、本件債務負担の合意は、使用者が労働者に対してあらかじめ損害賠償を予定するものであって、労働基準法一六条所定の賠償予定の禁止に抵触すると解する余地がないではないが、右賠償予定の禁止は、現実の損害の発生いかんにかかわらず、一定金額の支払を損害発生前にあらかじめ定めることを禁止する趣旨にとどまり、使用者が労働者に対して現実に発生した損害の賠償を請求することを禁止するものではないところ、本件債務負担の合意は、現実の損害の発生を要件とし、しかも賠償額の上限を現実の損害額とし、事故態様によっては賠償額の上限を三万円に限定するものであるから、右規定に反するものではないというべきである。)こと、控訴人は、平成五年四月五日午前一一時ころ、兵庫県小野市内のゴルフ場の構内において、荷下ろし作業に従事中、積み荷のベニヤ板が突風にあおられて、第三者所有の自動車に当たり、リアウィンドーを破損し、天井を一〇センチメートルほど凹ませたという事故(本件事故)を発生させたこと、右損害の賠償として保険会社から保険金一八万九四三〇円が支払われたこと、被控訴人は、右第三者に対し、右損害のうち九万九五八八円を支払ったことが認められる。

(二)  右認定の事実によれば、本件事故の原因は、控訴人が、荷下ろしの際、強風にもかかわらずベニヤ板をトラックの荷物台の上に不用意に載せたことにあったというべきであるから、控訴人の過失は重大なものであったというべきである。そして、第一事故による賠償額が一八万九四三〇円であったこと、そのうち被控訴人が負担したのが九万九五八八円であったことからすると、損害の程度も決して軽微なものではないというべきである。

その一方、本件債務負担の合意は、飲酒運転等の重大な事由による事故の損害等こそ賠償額全額を本人負担とさせているものの、右の事由以外の事故による損害は、賠償額は三万円を限度とすることからすると、それ自体としては、必ずしも不合理なものとはいえず、右控除が本件債務負担の合意の範囲内である合計一万円にとどまったことからすると、控訴本人は、本件事故により、その損害額のうち被控訴人の負担した九万九五八八円全額を求償されてもやむを得なかったところ、本件債務負担の合意により右損害額のうち三万円を超える部分を免責され、しかも現実にはそのうちの一万円しか控除されなかったというのであるから、右控除は本件事故過失及び損害の重大さに比して、極めて低廉な金額に限定されたというべきである。

(三)  以上によれば、右控除には、控訴人の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するというべきである。

4  新和会費名目の控除に対する同意が控訴人の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かについて

前記三2(三)認定のとおり、新和会とは、従業員の親睦を図る目的で、被控訴人の従業員により設立された任意団体であって、新和会費は、その維持のために徴収されていたものであったこと、毎月の会費は一〇〇〇円という低廉な金額であったことからすると、新和会費名目の控除に対する同意が控訴人の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するというべきである。

5  以上によれば、控訴人は、事故費名目の控除(抗弁1)、新和会費名目の控除(抗弁2)について、それぞれ自由な意思で同意をし、かつ、右各同意が控訴人の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するというべきであるから、抗弁1、2は、いずれも理由がある。

六(ママ) 請求原因4(立替金)について

原審における控訴人本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、請求原因4(高速道路の通行料金の支出)が認められる。

七  抗弁3(本人の意思)について

1  原審における(人証略)の証言によれば、被控訴人は、控訴人を含む従業員に対し、原則として、業務遂行中には高速道路を通行しないこととする旨を周知し、被控訴人の指示により高速道路を使用することとなった場合には売上から右通行料金を控除するが、従業員が勝手に高速道路を使用した場合には、被控訴人は関与しないこととしていたことが認められ、右認定に反する原審における控訴人本人尋問の結果は、前掲各証拠に照らし、採用することができない。

2  したがって、抗弁3は理由がある。

八  再抗弁(本人の許可)について

控訴人が、右高速道路通行料金を支出するに当たり、被控訴人から高速道路を通行することについて指示、了解を得たと認めるに足りる証拠はない。

したがって、再抗弁は理由がない。

九  結論

以上によれば、控訴人の請求は、いずれも理由がないので、これらをいずれも失当として棄却した原判決は正当として是認することができるので、控訴人の控訴は理由がないので失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法六七条、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中路義彦 裁判官 森鍵一 裁判官長久保尚善は、転補のため、署名押印することができない。裁判長裁判官 中路義彦)

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